「努力に勝る天才はなし」という言葉の意味を、もっと重く受け止めるべきではないかと考えます。頭が良い、悪いだけが合否の判断基準になるならば、頭がよくないと思っている受験生は、頑張ろうという気力さえ起きなくなってしまうのでは……。第一、本当に頭のいい人は、どれほどいるのでしょうか。世の中には、外国語の辞書を丸暗記してしまった南方熊楠や、大蔵経典をそらんじたといわれる、折口信夫のような人は存在しました。しかし、彼らは何百万、何千万人に一人という例外的な大天才です。東大をはじめとする難関校合格者のすべてが、彼らのような頭脳の持ち主で有り得ません。多くは、受験勉強に努力した結果、合格できたのだと思います。大学受験を目指す人は、「難関校合格者=頭のよい人」「勉強ができる=頭のいい人」という意識を改めることが先決です。
六年生の受験学年では生活のリズムを変えてまで変わったことをするのはリスクが大きいですが、お子さんが五年生以下の場合は、せっかく家族そろった時間なのですから、ふだんできないことをしたいものです。今の子は昔の子と比べて情報をたくさん持っているので、なんとなくいろんな経験もしているように錯覚してしまいますが、実際には実体験はかなり乏しくなっています。映像を見て知識としては知っていても、自分で体験したこととなるととても少ないのが実情です。事前に計画を立てて、長期宿泊するなどという大げさなことをしなくても、できることは幾らでもあります。どこに出かけるかは、ついお父さんやお母さんが提案しがちですが、まずはお子さんにやってみたいことを聞いてみてください。お子さんの口から何も出てこないようでしたら、お子さんのふだんの様子から興味を持っていそうなジャンルの博物館、スポーツの試合、演奏会、映画などを候補としてあげてみてはどうでしょう。またせっかく時間があるのですから、山や海、湖、川など自然のなかに出かけることもお勧めです。早起きすれば結構遠くまで行けるものです。お子さんの好きなことを思いっきりさせてあげる時間、そうしたものをまだ持っていなければ、興味を持って打ち込めるものを見つける時間にしてほしいのです。要は、親の方で「場」を用意してあげるのではなく、お子さんに自分の意志で選択させることがポイントです。ほとんどの子が親に言われて行動するクセがついていますので、こんなところからでも自分で判断する習慣を付けたいものです。
認知心理学は、コンピュータの情報処理プロセスをモデルに人間の知的活動を研究する学問だ。コンピュータ技術の発展とともに近年、飛躍的に進歩をとげた領域である。「頭がいい」とはどういうことか。認知心理学では、問題解決能力の高い人が「頭がいい」人だとされる。そして、よりよい解決方法を導き出すためには、知識が多いほうがいい。「思考」とは知識を用いて推論を行うことだからである。ペースとなる知識が多いほどいろんな思考が浮かぶ。なかには、知識は少なくても推論能力が豊かで面白いことをいう人もいる。そういう人はコメディアンに多いのだが、たとえばかつて一世を風鹿した横山やすしなどはその典型だろう。国際政治や経済の知識は少なくても、国際情勢についてたまに専門家がドキッとするような本質を突く発言をしたものだ。